橋口宏樹の言いたい放題サッカー日記

Deportivo YH 代表の橋口宏樹です.情熱的なアルゼンチン・ブラジルサッカーに深い感銘を受け30年!日本・南米サッカーの表方,裏方に従事し21年!サッカー事情や日々の生活で感じたことを,ざっくばらんにカジュアルに掲載していきます.

続編:サッカーの多様化を象徴している,アンプティサッカーの運動特性と選手のフィジカル特性 (研究報告)

おはようございます.Deportivo YH の橋口宏樹です.

 

昨日は,アンプティサッカーの「成り立ち」・「ルール」についてお伝えしました.

deportivo-yh.hatenablog.jp


今日は引き続き,アンプティサッカーの

「運動特性」「選手のフィジカル特性」について,お伝えしていきます.

 

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アンプティサッカーワールドカップ 日本代表の試合中の様子 提供 : JAFA

 実は私が,

”世界で初めてアンプティサッカーの運動特性とフィジカル特性を検討”しました.

約8年前になりますが,アンプティサッカーに科学的サポートが不足していたことが,このことから理解できます.

 

さて,本題ですが,

【方法】

  • 被験者は,アンプティサッカーワールドカップに出場した代表メンバー7人
  • 代表メンバー同士の紅白戦を分析対象
  • 試合中の運動強度,及び試合中のアクティブパターンを分析
  • フィジカル測定は,3種目のテスト

【結果】 

試合中の最大心拍数に対する割合は,平均 93.0 ± 2.6 %でした.

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試合における心拍変動の一例

試合中の移動スピード,及び移動距離を時間ごとに分析した結果では,

前後半0-5分において前半よりも後半の方が統計的に有意に低い値を示しました.

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試合における平均移動スピード

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試合における移動距離

試合中のテクニカル分析では,パス回数,チャレンジ回数などが後半に増加しました.

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試合におけるイベント分析

3種目のフィジカルテストの結果は,

サッカー日本代表選手の測定値 (安松.広瀬, 2010) と比較するといずれも顕著に低い値でした.

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フィジカルテスト結果

【考察】 

アンプティサッカーの試合中の心拍変動は,

サッカー競技者と同様であり,大部分のエネルギーが無酸素性過程から供給されていることが示唆されました.

また,結果には示しておりませんが,

本研究では大腿切断者は下腿切断者に比べゲーム中の平均心拍数が高い傾向にあり,松葉杖歩行で検討した先行研究と同様の結果でした (鈴木ら., 1992) .

 

高強度運動の割合は,

平均 2.2 ± 0.6 %で,エリートサッカー選手の値 8.1 % (Bangsbo et al., 1991) よりも低い数値でした.

 

試合中の移動スピード,及び移動距離を時間ごとに分析した結果では,

前後半0-5分において前半よりも後半の方が統計的に有意に低い値を示しました.

理由として,本研究での試合中の気温の低さ (12.7 ± 2.8℃) が関係していることが考えられ,

 

Mohr et al. (2004) は,

後半開始前に中強度のウォーミングアップエクササイズ (再ウォーミングアップ) を行うことで,ハーフタイムによる筋温の低下を回復させ,後半開始時のスプリントパフォーマンスを低下させないことを報告しています.

本研究では,

後半開始前に再ウォーミングは行っておらず,試合終盤においても平均移動スピードが低下していませんでした.

 

アンプティサッカー先進国のブラジル代表選手の試合映像と比較して,

アンプティサッカー日本代表選手は,

・切り返し時の安定性や方向転換

・ストップ動作

・加速の動きがスムーズではない

ように感じています.

 

また,ボールを奪ってから周囲の味方選手が前方スペースへ走り出す判断スピードや繰り返しスプリントを行える能力においても,日本代表選手よりもブラジル代表選手の方が優れているように感じています.

 

したがって日本人選手は,

全身の安定性,方向転換,ストップ動作を円滑に行う筋力,及びスプリントを繰り返し行える高強度運動パフォーマンス能力を,継続的に鍛える必要があると考えます.

 

それと同時に,高強度運動パフォーマンスには,杖を使ったコーディネーションスキル (Lisitsyn, 2007) も大きく関与すると考えられ,それらを伸ばしていくことは,世界と戦う最低条件であると考えます.

 

サッカーと同様にアンプティサッカーにも高強度運動パフォーマンスが重要であり,ゲーム中の高強度運動の割合を増やすことと体力の向上が,日本代表チームの強化に必要であると考えられます.

 

障がい者スポーツ選手に対する科学的サポートは,非常に少なく,本研究の手法を用いて,その他の団体競技種目へも応用することができると考えます.

 

Deportivo YH  橋口宏樹